知ってもらいたい税のお話し

事業承継税制とは、後継者への自社株式(非上場株式等)への異動にあたって、贈与税または相続税の納税を、猶予または免除することができる制度です。

事業承継対策をせずに放置していると、いざ事業承継という時に、相続を巡ってもめごとが起きる、後継者が経営ノウハウを知らない、取引先・従業員の信頼を得られないといった問題が生じ、最悪の場合、廃業に至ってしまいます。そのようなことを防ぐために、後継者を育成し、徐々に経営権を移していくといった計画的な取り組みが必要です。

事業承継税制は、実質税金面の支援制度です。
平成30年度税制改正で、株式の異動にかかる贈与・相続税額が100%免除になることも可能となっていますので、うまく活用して円滑な事業承継を実現しては如何でしょうか?

1.事業承継税制活用の流れ
贈与時と相続時では、事業承継税制を活用するための要件は異なりますが、大まかな流れは以下のとおりです。

(1)都道府県知事より、円滑化法の確認・認定を受けること(申請書等の提出)。
(2)税務署へ、贈与税・相続税申告書の提出。
(3)税務署へ、納税が猶予される税額および利子税の額に見合う担保の提供。
(4)税務署へ、継続届出書等の提出(引き続き猶予または免除を受ける場合)。

2.納税猶予を受けるための主な要件

(1)会社の主な要件
上場会社でないこと、中小企業者に該当する会社であること、風俗営業会社でないこと、資産管理会社に該当しないこと(一定の要件を満たすものを除く)。

(2)先代経営者の主な要件
① 贈与時:会社の代表権を有していたこと、贈与時において会社の代表権を有していないこと等。
② 相続時:会社の代表権を有していたこと、相続開始直前において後継者を除いた中で最も多くの議決権を有していたこと等。

(3)後継者の主な要件
① 贈与時:会社の代表権を有していること、20歳以上であること、役員の就任から3年以上を経過していること等。
② 相続時:相続開始の日の翌日から5ヶ月を経過する日において会社の代表権を有していること、相続開始直前において会社の役員であること等。

(4)会社雇用確保の要件
基準日における雇用の平均(5年間の平均)が、贈与・相続時の8割を下回らないこと(平成27年改正以前では、5年間毎年雇用の8割を維持する必要あり)。

上記の要件以外にも、先代経営者の株式保有状況、後継者の取得株数の条件、引き継いだあとも5年間事業を継続する等の要件があります。
また、納税猶予期間中に株式の譲渡を行うなど、一定の事由に該当した場合、利子税とともに本税を納付する必要があるので注意が必要です。

次号では、既存の事業承継税制の内容を拡充した特例措置(平成30年度税制改正)について紹介します。

2018年7月現在


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松川 吉雄