適格請求書等保存方式、通称「インボイス制度」に係る登録申請が昨年10月より始まりました。申請期限である令和5年3月31日が迫ってから慌てずに済むよう、今から準備を進めておくことが賢明です。新制度への対応が遅れると、ビジネスに悪影響を及ぼす可能性も否定できません。まずは、課税事業者についてみていきます。
●仕入税額控除ができない!?
新制度が始まる令和5年10月1日以降、仕入税額控除を行うには原則、売手に対し、適格請求書(以下インボイス)の発行を求め、適切に保存(7年間)する必要があります。売手が上記の登録を済ませていない場合、インボイスが発行されないため、控除対象外となります。控除対象外になると、消費税の納税額が増えることになりかねません。売手が免税事業者や一般の消費者の場合も同様です。
ただし、免税事業者等からの仕入控除が、制度が開始される令和5年10月から全くできなくなるわけではありません。経過措置として令和8年9月末までの3年間は80%控除、さらに令和11年9月末までの3年間は50%控除が認められます。
●事業所家賃を個人に支払っていませんか?
家賃の支払先である大家さんが個人であれば、その個人は免税事業者の可能性が考えられます。この場合は、事業所家賃に係る消費税額については控除できませんので注意が必要です。大家さんが登録しているかどうかは、インターネット上の公開情報で確認することができます。
●売手としての注意点は?
逆の立場もみていきましょう。インボイス発行事業者として登録を受けていないと、買手から求められてもインボイスを発行できません。取引先から敬遠される恐れもあります。ただし、買手が一般の消費者のみの場合に、登録を受ける必要があるか、慎重にご検討ください。
登録を受けてインボイス発行事業者になると、買手の求めに応じ必ず「交付」し、その写しの「保存」が義務付けられます(必ずしも紙でなく、電磁的記録も可)。交付と保存を着実に実行できるよう、システムの準備や従業員の理解を深めることが重要です。
●交付義務が免除される取引
①3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
②出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(※出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限る)
③生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(※無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)
④3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
⑤郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(※郵便ポストに差し出されたものに限る)
いかがでしょうか。まずは制度への理解を浸透させ、必要に応じて登録を申請しましょう。次回は、免税事業者編をお伝えします。
2022年1月現在
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