
「実家を相続して、しばらく空き家のまま・・・」当てはまる方も多いのではないでしょうか。「空き家の間も定期的な掃除や修繕など維持・管理の手間もかかり、自宅から遠い場所なら負担も大きい。売りに出してから何年も買い手が見つからないケースも珍しくない」(日本経済新聞「相続空き家、売りやすく」R7.3.15)。そこで今回は、相続空き家を売却する際にかかる税金を抑える(場合によってはゼロになる)制度を紹介します。いわゆる「相続空き家3,000万円控除」です。
(1)譲渡所得にかかる税金
不動産を売却して得た利益は、譲渡所得といい、所得税等の負担が発生する場合があります。譲渡所得の税率は、所有期間5年以下で39.63%、5年超で20.315%となります。譲渡所得は、右の式で算出します。譲渡所得=売却金額-(取得費+売却に要した費用)
※取得費…造成・測量代、登記費用等。但し、事業所得等の必要経費としたものは除く。
※売却に要した費用…仲介手数料や印紙等。※所有期間は売却した年の1月1日時点判定。
(2)相続空き家の譲渡所得3,000万円控除
譲渡翌年に確定申告をすれば、譲渡所得から3千万円まで差し引けるのが、この特例です(相続人3人以上の共有の場合は控除額が1人当たり2千万円まで)。対象は、被相続人が1人で住んでいた戸建て住宅とその敷地で、昭和56年5月末以前に建築され、原則、死亡時まで被相続人が住んでいたことが条件です(老人ホーム入居の場合も、一定の要件下で認められます)。相続発生後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する必要があり、かつ令和9年末までの期限があります。また、譲渡額は1億円以内であること、既に耐震基準を満たす家屋を除き、相続発生の翌年2月15日までに耐震工事を行うか、更地にすることも必要です。
(3)「不動産仲介手数料の上限額引上」改正も
管理が行き届かない空き家は周辺の環境にも悪影響を及ぼす、このように国は考えており、相続空き家をなるべく減らそうと様々な対策を取っています。税務とは直接の繋がりは無い改正ですが、R6年7月実施の「不動産仲介手数料の上限額引上」も、不動産会社が低価格の空き家を取り扱うインセンティブを高め、空き家の流通促進を図るものです。詳細は割愛しますが、不動産業者にも依頼しやすくなっているのは間違いないでしょう。
相続した住宅や土地は、空き家でなくとも、売却時の税金を抑える特例が複数あり、売却を検討中の方は、どの特例が使えるのか(または併用か)、一度税理士に相談することをお勧めします。
2025年5月現在
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