前回の掲載では、後継者への事業承継を税制面から支援する事業承継税制の概要を紹介しました。今回は、平成30年度税制改正により、改正前の支援内容を拡充させた特例措置について紹介します。
この特例措置を活用し、各種要件を満たした場合、株式にかかる贈与税額や相続税額が100%免除になることも可能となりました。
ただし、この特例措置は期間が限定されていますので、活用される場合は、早めの意思決定が必要です。平成30年度税制改正で追加・拡充された主な点は以下の通りです。
※ 本誌2018年7月-8月号に「事業承継税制を利用しよう!!」が掲載されています。
(1) 特例承継計画の提出の必要性
特例措置を活用するためには、平成30年4月1から平成35年3月31日までの期間に、特例承認計画を都道府県知事に提出し、確認・認可を受ける必要があります。
(2) 株式の異動期間
平成30年1月1日から平成39年12月31日までの期間に、非上場株式等の贈与・相続をすることが必要です。
(3) 対象株数
改正前は、総株式数の最大3分の2までが対象でした。改正後は、全株式が対象となります。
(4) 相続時精算課税制度の対象拡大
改正前は、60歳以上の者から20歳以上の推定相続人または孫への贈与が要件でした。改正後は、60歳以上の者から20歳以上の者への贈与となります。
後継者が子や孫といった親族以外の方だとしても、相続時精算課税制度を活用できることになっています。
上記の改正点以外にも、納税猶予割合が100%可能、最大3人の後継者に承継することが可能、雇用確保要件の事実上の撤廃、株式売却時の減免制度等も創設されており、重要な税制改正と言えるでしょう。
ただし、この制度を活用し事業継続要件等を満たしたとしても、すぐに税金が免除となるわけではありません。1代目から2代目に承継される時の税金は、2代目が3代目に事業承継できた場合に免除となるという仕組みです。
100%の免税が可能となるこの制度をうまく活用できれば、後継者不足に悩む我が国の現況を、打開することができるかもしれません。
2018年9月現在
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