知ってもらいたい税のお話し

「父が生前住んでいた家およびその家がある敷地を売却することになりました。10年ほど前に父は亡くなったのですが、父が亡くなってから現在まで空き家になっています。また、上記不動産は未分割のままです(父の名義のまま)。今回の売却の前に、私に所有権を移転して売却する予定です。相続した居住用家屋等を売却する際に、3,000万円の控除ができる特例があると聞いたので、その特例を適用して申告をしたいのですが可能でしょうか?」

最近、このような空き家売却に関する税務相談をよく受けます。

近年、相続した空き家を相続人がきちんと管理せず、放置したままにするケースが急増し、社会問題となっています。

その対策として、相続した空き家を売却する際、その売却益に対して3,000万円の控除が認められるいわゆる「空き家控除の特例」が創設されました。
現在、この特例の適用期限は、2023年12月31日までとなっています。

この特例適用の主な要件は以下のとおりです。

① 譲渡する不動産は、相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等であること。
② 相続日から起算して、3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。
③ 昭和56年5月31日以前に建築された建物で、区分所有建物登記がされている建物でないこと。
④ 被相続人が相続直前まで家屋に居住していたこと。さらに被相続人以外の居住者がいなかったこと。
⑤ 相続時から譲渡時まで、事業の用、貸付けの用、又は居住の用に供されたことがないこと。
⑥ 譲渡額が1億円以下で、一定の耐震基準を満たす建物であること。
⑦ 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して譲渡したものでないこと。

今回の相談に対する回答は、「特例適用不可」となります。
相続した日から10年を経過しているので、要件の②に該当しないからです。

「相続は、死亡によって開始する」と民法で定められています。
死亡とは被相続人が死亡する事であり、被相続人が死亡すると、それだけで相続が開始されます。

今回の相談者は、相続した不動産は未分割のままなので、所有権を移転した日から3年を経過する日の属する年末までに売却すれば、特例適用が可能だと思っていたようです。

上記で掲げた以外にも要件はありますし、耐震基準を証明する必要書類等を揃えるのにも時間がかかります。
また、居住用家屋を取り壊し、更地にした後に売却しても、一定の要件を満たせば特例の適用は可能です。

今回の相談のように特例適用期限を超過しないためにも、相続が発生したら親族で早めに協議し、専門家に相談することをお勧めします。

2019年7月現在


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松川 吉雄