知ってもらいたい税のお話し

新型コロナウイルス感染拡大の収束がみえない中で、確定申告シーズンの到来です。2020年度分の所得税の申告(申告期間:2021年2月16日~3月16日)では、多くの改正が実施されるため注意が必要です。
会社勤めで年収850万円以上の方は税負担が増す一方、個人事業主の方にとっては減税となるなど、多くの方に影響を与える改正が実施されます。

所得控除の改正!! 税負担が安くなる?

今回は、納税者全員に関係する「基礎控除の引き上げ」、サラリーマンをはじめ勤務の方に影響がある「給与所得控除の引き下げ」について概要を見ていきましょう。

所得税の計算をする際、所得の合計から差し引くことができる仕組みを所得控除といい、このうち職業や扶養者の有無に関わらず、すべての納税者に適用される所得控除が「基礎控除」です。課税の対象となる所得を減らすことができ、所得控除が増えるほど、納める税金は少なくなります。

改正前は一律38万円だった基礎控除額が48万円に引き上げられた一方で、高所得者に対して段階的に控除額を引き下げる所得制限が設けられました。給与所得や事業所得などを合算した「所得金額合計」が2,400万円超では控除額32万円、2450万円超2500万円以下では控除額16万円、2,500万円を超えると基礎控除が適用されず増税となります。

続いて、サラリーマンなど給与所得者の給与から一定額を控除する「給与所得控除」について、年収850万円までは一律10万円の控除引き下げとなります。従って、年収850万円以内では、基礎控除額10万円の引き上げと給与所得控除額10万円の引き下げにより、改正前後で税金負担に変更はありません。一方、年収850万円超では、給与所得控除の引き下げ額が10万円を超えてしまい、基礎控除10万円増では引き下げ分を補えず、税負担増となります。他方、個人事業主など給与所得者以外の人にとっては、基礎控除の引き上げ分のみが影響するため税負担減となります。

上記のほか、所得金額調整控除の創設、配偶者控除・扶養控除の所得要件の変更、ひとり親控除の創設、寡婦・寡夫控除の見直し、青色申告特別控除額の変更・引き下げなど多くの改正が実施されます。
なお、申告の際はパソコンなどを活用した申告・納税システム「e-Tax(電子申告)」が推奨されています。昨今の情勢の中、社会的距離の確保など感染防止に配慮し、税務署や確定申告会場での混雑緩和が重要となります。スマートフォンでの手続き拡充、利用方法の簡略化も進むほか、e-Taxの利用で税負担上有利になる制度もあるため、活用してみてはいかがでしょうか。

2021年1月現在


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松川 吉雄