やんばるスケッチ

冷たい北風が暖かい南風に変わる頃、野山は春めいて色鮮やかな花々に巡り合う季節になる。大浦湾の瀬嵩海岸は、ちょっと風変りな岩山「五若森(いつわかむい)」とサンゴが混ざった浜辺に、さざ波が寄せては返す光景が春の訪れを告げていた。

この時季になると「名護市東海岸フラワーフェスティバル(2024年3月9日)」の準備で地域は活気に満ちあふれ、地面を這(は)う青紫色の「ヒメキランソウ」の小花も健気(けなげ)に咲いていた。

「花」をキーワードにして、さまざまな地域課題解決策のひとつとしてのフラワーフェスティバルも10年目になった。オープンガーデンなどをきっかけにして、民家や沿道に季節の花々を咲かせる活動が、訪れる人達への心を和ませる風景として親しまれている。

また、若い移住者家族も少しずつ増えてイベントに向けた取り組みにも、地域と馴染んだ活動が見られるようになっている。

沿道からアダン林をくぐり抜けた浜辺には、薄紫色の花(グンパイカズラ)のツタが縦横に伸びていた。そして、海へと向かう、帯状に伸びたいくつものヤドカリの足跡が、打ち寄せる波に打ち消されていた。

変わりやすい春の天候が落ち着く頃、雨の季節がそっとやってくる。


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高嶺 晃