若葉色の森が深緑へと変わる頃、やんばるの天候は不安定になり、くもりや雨の日が続く季節となる。
この時期には、沖縄本島で最高峰といわれる国頭村・与那岳(標高503メートル)から南北に連なる山の尾根にかかった霧のような雲が、山間や川筋を抜けて裾野に広がっていく光景が見られる。
墨絵のような無彩色の風景の中に、ポツポツ・と白い花の「イジュ(伊集)」が咲きだす。
黄色い雄しべを持ち気品さえ感じさせるイジュは、儚くも短い開花の末に黄ばんで潔くポトリと落花してしまう。
そのためか、奇麗に咲いているのをつい見逃したりするも多々あるが、時には華やかに群れ咲く場面にも出会うこともあった。
森が湿気に包まれているため、ツル性で薄紫色の花「リュウキュウアサガオ」も勢いよく伸び、イジュの花木にクルクルと絡まって咲いている様は自然が創りだした芸術作品のようにも見える。
一方、麓の集落では色鮮やかな花々も咲いていた。中でも強烈な色合いのストレリチアはひときわ目立っていた。
くもり空や雨があがると、いよいよ太陽がまぶしい夏が訪れる。
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