
さわやかな風と、短い晴れ間が梅雨入りまでつづく時季を沖縄では「陽春(うりずん):3月から4月」と呼んでいる。
この頃になると、寒い時期に紅く落葉していたやんばるの森も深緑となり、木陰をつくるのに適したコバテイシ(方言:クァデーサー)の葉も、つややかな緑の葉が目立つようになる。
そんなコバテイシの木陰から垣間見えるレトロな洋風の建物(大宜味村役場旧庁舎)がある。それは、戦火を免れて現存する鉄筋コンクリート建造物としては県内最古(大正14年:1925年、国指定重要文化財)である。
建設に携わったのは、古くから県内で高度な技術を持ち名声を誇る大宜味大工(うじみぜーく)であった。
戦後の貧しい時代、男達は船大工の技術を生かして県内各地で建設業に携わる出稼ぎに出て、女性達は芭蕉布を生業として暮らしを支えていた。それが、地域文化の礎となって今に活きている。
小雨が梅雨の兆しを伝える頃、水田にはオクラレルカの花が咲き、村内の工芸作家達による「いぎみてぃぐま展(おおぎみの手先が器用な作品展:4月)」の歴史と伝統を繋ぐ恒例の催しが開催される。
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