年が明けると沖縄では、日本で一番早い「寒緋桜」や「サザンカ」などが咲きだし、やんばるの森は春の兆しで彩られる。
それらの花が咲き終わる頃、つやつやとし深い緑葉に、蕾(つぼみ)のような真っ赤な「ヤブツバキ」が咲く。
寒い冬を越えて春に花をつける木というところから「椿」と呼ばれていると言われ、俳句では春の季語としても使われている。
また、越冬の強い生命力や存在感から「茶花(茶席の床の間に生ける花)」としても用いられているようである。
一方、琉球王国時代の組踊りや琉球舞踊などでは、女性の髪に紫長巾(むらさきさーじ)を巻き、髪飾りとして挿す前花(めーばな)として「椿」が一般的に使われていて、小粒ながら広い舞台でも存在感が伝わってくる。
花曇りの空模様の中で、真っ赤な「ヤブツバキ」が満開だったが、散り際は花首(茎の先の花を支える部分)から潔くポトリポトリと地面に落ちて、ジュウタンのように敷き詰められた光景は風情があった。
普段は気にもとめないような「やんばるの花達」の様子によって、穏やかな春の訪れを知ることができる。
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