やんばるスケッチ

一年で一番忙しい年末のことを「師走(旧暦12月の異称)」と呼んでいる。が、コロナ禍での自粛ムードによって、人々の行動様式が大きく変化した。そのため、時候の挨拶も虚しく伝わってくる。

世界遺産登録(2021年)に沸く「やんばる」では、来訪者に対する歓迎ムードもすっかり影を潜めてしまった。いつもは初日の出を拝むスポットで知られる辺戸岬も賑わいを失うだろう。

岬の近くに旧道「戻る道(もどるみち)」がある。108年前に村人達が苦労して改修するまでは、人がすれ違えない程の岩の隙間の道
(約100メートル)だった。

そこで道の中間に旗を立て、後に着いた方が道を譲って戻る事から名付けられた。今は、車がすれ違う程に改修されたが、さらに新たな道路新設で「戻る道」は、ほとんど利用されなくなった。

でも、岩の存在感は昔のままで、近くの庭先で紫色の実をつけた「ムラサキシキブ」が、季節や時の移ろいの情景を伝えていた。

今年も終わろうとしている。「戻れない時間」を回想しながら明けた年が、希望に満ちた景色であることを心から祈るばかりだ。


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高嶺 晃
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