ディズニーの魔法の成分

沖縄も梅雨のシーズンですね。しとしと降り続く雨に濡れた地面を眺めていると、なんだか物悲しく、どうしても外に出る足取りが重たくなってしまいます。けれど、同じ「濡れた地面」でも場所が変わると、その光景は一転して全く違う感情を連れてきてくれます。

写真は東京ディズニーシーのメディテレーニアンハーバーを撮ったもので、無人なのは、これがまだパークオープン前だからです。そして、この濡れた地面は、先ほどまで雨が降っていたことを示すものではなく、〝清掃後〟であることを表しているのです。

東京ディズニーリゾートでは、パークの閉園時間を迎え、ゲストが帰られた後も休むことはありません。夜の清掃を担当する『ナイトカストーディアルキャスト』の出番です。

彼らが掲げる清掃の基準は、驚くほど徹底しています。それは、〝赤ちゃんがハイハイできるレベル〟であること。これは私が、入社初日にトレーナーから教えてもらったことです。「毎日、パークをグランドオープンした時の状態まで戻しているのだ」と。

パークの地面は、単なる通路ではなく、物語が繰り広げられる「舞台」そのものです。明日訪れる小さなゲストが、もし地面に手をついたとしても、柔らかな手が傷つくことなく、安心して魔法の世界を楽しめるように。そんな優しい目線で、彼らは一晩中広大なパークを磨き上げます。

「彼らの仕事は、日中のカストーディアルキャストと決定的に違う点があります。それは、目の前のゲストから直接「ありがとう」という言葉を受け取る機会が、全くと言っていいほどないことです。 そんな舞台裏の仕事を終え、夜明けと共に彼らは帰路につきます。

彼らが仕事を終えて駅に辿り着く頃――それは、ちょうどこれからパークへ向かおうとするゲストたちが溢れている時間です。これから始まる夢の時間に、期待で胸を膨らませ、弾む足取りで改札を抜けていく人々。ナイトカストーディアルのキャストたちは、自分たちの夜とゲストの朝が入れ替わるその瞬間、すれ違う人々の「輝く笑顔」を見るのが一番の喜びだと聞いたことがあります。「今日も最高の舞台は整っているよ、いってらっしゃい!」心の中でそう呟き、自分の仕事への誇りを再認識するのかなと想像してみます。

雨が大地を潤し、やがて恵みをもたらすように。この世界もまた、目には見えない無数の仕事によって、豊かに保たれているのだと気づかされます。積み上げた想いが誰かの笑顔につながっていると、そっと教えてくれる魔法の成分ですね。


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川崎 真衣