ディズニーの魔法の成分

ディズニーの接客サービスで注目を集めることが多い 「カストーディアルキャスト」 。

カストーディアルは日本語にすると、保護・保管という意味の言葉で、彼らはパーク内の清掃業務を中心として行う仕事をしています。

清掃だけでなく、パーク内で道に迷った時にはガイドマップを取り出して分かりやすく案内してくれたり、カメラを構えていると 「皆さんでお撮りしましょうか?」 と声をかけてくれたりします。

そんな親切な彼らが清掃をしている姿は、颯爽としてとても格好良いものなのですが、初めて見ると少し驚いてしまう光景に出会うことがあります。

それは、床に溢れたジュースやアイスクリームなどの汚れを拭き取る時に、アルコール液を吹きかけ、その上からペーパーナフキンをかぶせ、手ではなく、足や箒で器用に拭き取っていくのです。

足や物で物を扱うことは、行儀が悪く決して褒められることではないのに、なぜ彼らはそうするのか。その理由を一言で言うならば 「安全のため」 と表現するのが一番適しています。

想像してみてください、大勢のゲストで賑わうパーク内で、床を拭き取るために通路でしゃがみこんでいるスタッフがいたら。前を見ずにはしゃいで走っている元気な子供が、そのしゃがみこんでいるスタッフに気づかず全力でぶつかってしまったら、転んで怪我をする可能性があります。

また、手で拭き取り作業を行った場合、その直後に目の前で家族4人が写真を撮ろうとしている所を目撃し、全員で記念撮影してあげたいと思っても、汚れた手でゲストのカメラをお預かりすることはできません。

ああ、なるほど。そう聞けばそれが正解だと感じますし、ディズニーのテーマパークでこの光景は周知の事実になっていることもあって、そこに異論を挟む人はいません。

なぜ異論を挟む人がいないのか、その答えは、異論を挟む余地がないほどに彼らの立ち振舞が美しく洗練されており、かつ笑顔やコミュニケーション等、清掃以外のその他の要素が素晴らしいものであるからに他なりません。

そう、すべての言動が 「あれはきっと何か意味のある行いだ」 と思わせる説得力を放っているのです。

現在はどこでも 「マスク」 が接客サービスにおける最大のハンデであろうと思います。マスクをしては表情でうまく伝えることが困難な上に、スタッフの考えを読みにくいお客様側も不安を感じます。その不安を払拭するだけの、今まで以上の優しさや丁寧さがなければ、安心材料のためのマスクはただ大きな障害となってしまいます。しかし、困難な状況だからこそ互いに伝わる喜びを大きく実感することも確かです。

カストーディアルキャストの使う小さな魔法の成分が、きっと私達へのヒントになってくれるでしょう。


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川崎 真衣
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