ディズニーの魔法の成分

東京ディズニーシーという、世界で唯一の 「海」 をテーマにしたディズニーテーマパークの中で、最もその雰囲気を現していると感じられるアトラクションはなんでしょうか。個人的には、開園したばかりのディズニーシーで初めて目にした 「ヴェネツィアン・ゴンドラ」 の、時と場所をも忘れさせる圧倒的な異国情緒は、今でも深く胸に残り続けています。

「ヴェネツィアン・ゴンドラ」 という名前からも察することが出来る通り、このアトラクションのテーマとなっているのは、イタリアの水の都・ヴェネツィア。ディズニーシーへ足を運んだことがある方であれば、 〝そうそう!イタリアっぽいよね!〟 とピンと来られるのではないでしょうか。ディズニーシーでは、エントランスから中へくぐり抜けてくると、一面に広がる地中海の雰囲気が目に飛び込んできます。

では、そもそも何故ディズニーシーは入ってすぐのエリア一帯に、イタリアというテーマを据えたのでしょうか。それは、日本でふたつめのディズニーテーマパークのデザインを考えるときに、日本人にとって 「畏敬」 と 「愛着」 を感じられるものは何だろうと思考を巡らせ、たどり着いたのが建設予定地の背後に広がる東京湾 = 『海』 というイメージだったそうです。

エントランスプラザをくぐり抜けて、目の前に広がる海と火山を一望できる場所 「ポルト・パラディーゾ」 と、ゴンドラの乗り場のある場所 「パラッツォ・カナル」 の2箇所は特に南イタリアの雰囲気が色濃く出ていますが、これは、イタリアがとても長い沿岸を持ち、地中海に属する4つの海に面しており、海と多様な関係を作ってきた国であるということ、そしてイタリア人の旅行者を歓迎する国民性と人懐っこさは、最初の寄港地(テーマポート)としてうってつけであったこと、という理由からだったそうです。

実際に 「ヴェネツィアン・ゴンドラ」 に乗ってみると、陽気なイタリア人を思わせるキャストが、明るい笑顔で
〝チャオ!〟 と挨拶をしてくれることからも、この背景となる物語に深い納得感を得られます。

そんな明るく陽気な様相だけでなく、ヴェネツィア地方で度々住民を悩ませる 「水害」 についても、その歴史を建物に刻み込んでいるのをご存知ですか。1966年にヴェネツィアで起きた大水害によって付いた浸水の跡が、建物の壁面に白く帯状に残されているのです。

日本も海に囲まれた島国ならではの様々な自然との付き合いがありますが、だからこそ分かるそこにある光と影を、この魔法の成分から学ぶことができますね。


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川崎 真衣
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