知ってもらいたい税のお話し

最近、「子供や孫に住宅資金を贈与したいがどうすればよいか?」という相談をよく受けます。
これは、直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税の特例を活用し、相続が発生する前に、うまく子孫に財産を引き継ぎたいという要望からです。

相談が多い理由として、消費税増税直後の期間に住宅取得等資金を贈与し、かつ、それが省エネ住宅等に該当する場合には、3,000万円という高い非課税枠が設定されていることが要因でしょう。

なお、贈与税の基礎控除額と併用可能ですので、最大で3,110万円までが非課税になります。
また、贈与から3年以内に贈与者が死亡したときの贈与財産は、原則相続税の対象として加算されますが、上記特例を適用して非課税になった部分は加算する必要が無いことも大きな利点となります。

省エネ住宅等と一般の住宅の場合や消費税増税前と増税後の贈与の時期等で、非課税限度額が違うので要件の確認は必須ですが、今回は上記特例を活用する際の注意点を紹介します。

(1)個人間売買は非課税枠が減少する

一般の住宅を購入する場合でも、2020年3月までの贈与であれば、2,500万円の非課税枠があります。
ただし、購入する住宅が個人間の売買によるものだと、原則700万円の非課税枠しか認められませんので、贈与する側は注意が必要です。

個人間売買であっても、2,500万円の非課税枠が認められるのは、住宅を売る側が、消費税の課税事業者である場合です。
課税事業者は、消費税申告の義務があり、きちんと消費税の納税がなされます。

買う側は、売る側が課税事業者だろうが非課税事業者だろうが正直関係ないのですが、消費税増税後の非課税枠を増やしたことを考えると、増税後の事業者(法人や個人課税事業者)の経済活動の後押しをする代わりに、消費税をきちんと納税して欲しいということでしょう。

また、土地のみを購入する際の非課税枠も700万円までです(住宅を建築するための土地であっても)。
そもそも土地の売買には消費税がかからないので、増税後であっても非課税枠の増加が認められないのは当然でしょう。

(2)相続税の小規模宅地等の特例が使えなくなる

小規模宅地等の特例を活用できると、相続税を大幅に減らすことができます。
制度の内容等は割愛しますが、この特例には、相続人に持家が無いことが要件にあります。

したがって、相続発生前に相続人が住宅を手に入れた場合は、小規模宅地等の特例を適用することができなくなくなります。

(3)住宅ローン控除との併用

住宅ローン控除は、原則として年末のローン残高の1%が所得税の税額から控除される制度です。

しかし、住宅ローン控除の対象には上限があります。
ローン借入額と贈与額の合計が住宅の価格を超える場合は、住宅ローン借入額の一部が住宅ローン控除の対象外になります。

例えば、4,500万円の住宅ローンを組み、贈与額が700万円で合計5,200万円の資金を用意し、住宅の価格が5,000万円だった場合は(引越や家具購入等が200万円)、住宅ローン控除が受けられるのは4,300万円までとなります。

上記で紹介したように、住宅取得資金等の贈与は注意が必要です。
また、非課税枠の範囲で贈与を受け、贈与税額が0円だったとしても、贈与税の申告をすることが特例活用の大前提となります。

2020年03月現在


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松川 吉雄