秋分の日を過ぎると、勢いのあった入道雲が穏やかな風に吹かれて「すじ雲」や「うろこ雲」となり、猛暑も和らいでいく。
標高80メートルの岸壁から束ねた茅(カヤ)を投げ落とすと、海から吹き上げる強風によってバラバラになったことから名付けられた「茅打ちバンタ(かやうちばんた)」が、国頭村の辺戸岬にある。
「カヤ」は屋根をふく材料の草でススキが枯れたもの、伝統的沖縄の家づくり「茅葺屋根」には欠かせない役割を果たしていた。
一面ススキに覆われた辺戸岬から、砦(とりで)のような岩山が見える。そこは、琉球王国時代に神様が降り立った最初の聖地「安須森御嶽(あすむいうたき)」で、馴染みの観光地(大石林山)としても知られている岩山群だ。
岬には、三年前(2019年)に休校となった「北国小学校」があり、南の島なのにと校名が面白いと揶揄された学び舎だ。また「祖国復帰闘争碑」なども、ゆらゆらと揺れるススキのすきまから見えた。
切り立った岸壁、聖地の岩山、休校の学び舎に、自然と歴史と暮らしの営みを回想させる風景は、秋風によって哀愁がいっそう深まる。
夕日に染まる雲と厳つい岩山に、ススキが優しく寄り添っていた。
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