やんばるスケッチ

春風そよぐ名護市東海岸の大浦湾を望む一帯で始められた「フラワーフェスティバル」は、かれこれ11年目になる。

この時期は、それぞれの人生の節目としての旅立ちの季節でもある。その変化を後押しするかのように、沖縄では突然「ニンガチカジマーイ(二月風廻り)」と言われる嵐のような強い季節風が吹く。

フェスティバルの催しで「帆(ほ)かけサバニ」の帆走を大浦湾でやることになった。ヨット好きの友人にお願いして準備が整い、約束の日に待ち合わせた。が、風の強い日で彼は結局現れなかった。

夕方になって、宜野湾港マリーナから一人で名護市に向かったヨットが遭難して彼が亡くなったことを知った。思い起こせば、宜野湾港マリーナで幾度かヨットに乗せてもらった事があった。

カラフルなヨットハーバーの風景と一体となって、誰もが笑顔に包まれていた。「いつか大浦湾にも、そういうヨットの帆が浮かぶ風景が見たいね」と、彼と大浦湾内を漁船で楽しんだこともあった。

春の嵐が、思い出を吹き消すように立ち去った後、穏やかな小春日和につつまれた道端や野や集落の庭に、花々が鮮やかに咲いていた。

なぜかこの時期になると、ほろ苦い潮風の香りを感じる。


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高嶺 晃
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