秋は日暮れが早く、あっという間に夕日は沈む。
落日の名護湾には、城跡のような石積の塀を松並木が取り囲む野外劇場があり、そこからなだらかな芝生の丘が砂浜に曲線を描くようにして海の風景に溶け込む「21世紀の森公園」がある。
この公園が手掛けられたのは、「日本が、もはや戦後ではない」とした好景気から不景気に転落したころだった。
一方、沖縄では本土復帰(1972年)を迎えた後に、海洋博公園(1976年)が開園するなど本土に追いつけと公共工事の槌(つち)の音が島中に響き渡り、大型開発の波によって落ち着きのない20世紀末の時代だった。
夕日が水平線に沈む公園では、石積のアーチ門から黄金色(こがねいろ)の陽がさし込み、松並木の長い影が芝生に映し出され、心地よい海風が吹いていた。
芝生では子供達が「松ぽっくり」を拾い集めながら無邪気に燥(はしゃ)いで遊んでいた。そんな、ありふれた懐かしい日常の情景にどこか心なごむものである。
いまや伝説のように伝えられ、風物詩でもあった「ヒートゥ(イルカ)狩り」の賑わいは、名護湾の埋め立てなどで完全に消滅した。
が、黄昏(たそがれ)時の名護湾は、今日も穏やかで美しい・・・。
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