やんばるスケッチ

初日の出を見るために大勢の人が集まる人気のスポットの国頭村辺戸岬から、約8キロ先に沖縄本島最北端の奥集落がある。

海に面しているものの集落は、すこし離れた山間の所に隠れるようにある。古くは、陸路が過酷で、海路(山原船)でもって林業などを生業(なりわい)として暮らしが成り立っていた。

陸の孤島(2023年6月現在 人口130人、世帯80戸)のような村の暮らしを支えてきた「共同売店」は、村人が株主の相互扶助の柱である。

基幹産業の茶栽培(1929年着手)は「日本一早い新茶」として知られ共同売店を支える重要な収入源でもある。もうすぐ寒空に春風が吹くころ、小高い丘の茶畑は茶摘みで活気を取り戻す。

この村の集落調査に係わったのは半世紀も前だ。沖縄民家の来客を迎える一般的な「一番座」の屋敷配置が異なる唯一の事例である。

道に面した入口の所には「納屋、家畜、台所、トイレ」があり、客を迎える「一番座」は道から離れている。日常生活を優先にした屋敷配置は、日常の暮らしを優先にした独特な村の住まい方である。

ひんやりとした風が吹く拝所(ミヤギムイ)の寒緋桜を背景にした集落風景は、今も昔と変わらない心地よい空気に包まれていた。


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高嶺 晃
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