やんばるスケッチ

さわやか春風が吹き、やんばるの山々が若葉色に萌える頃、私達のまわりではイロイロな別れと出会いがある季節でもある。

旧名護市嘉陽小学校が99年の歴史に幕を閉じたのは、もう11年も前の事だ。今は「美ら島自然学校」として海がめを飼育して海に返す作業や、さまざまな自然に関わる学習が出来る場所として活用されている

小学校最後の卒業式の日は、ちょうどウミガメの産卵の時期でもあった。18年に渡り学校に面した砂浜に、ウミガメの産卵を助けて海に放流する活動をして来た浜辺の風景にも「さよなら」を告げた。

ほどなくして、子供達が名前をつけて育てたウミガメは海に帰っていった。放流の日には、唱歌「いつでもあの海は」が唄われていた。

「いつでもあの海は 僕の友達 大きな夢をもてと 未来にまねく・・・」かすれるまでの涙声で唄って別れを告げていた。

静けさに包まれた校庭につづく砂浜に打ち寄せる波の音が、今も子供達の唄声のように聞こえてくると、陽気な春もちょっと寂しい。

ツツジの花や、薄紫色で香のするメイフラワーなどが、民家の庭先や道端で咲き終えると、野山は濃霧に包まれ梅雨に入る。


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高嶺 晃
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