
沖縄本島北部地域のことを通称「やんばる」と呼び、その南限は西海岸で恩納村、東海岸では宜野座村や金武町あたりになる。
高層ホテルが建ち並び、夕日が沈む西海岸は著しい変化を遂げているのとは対照的に、朝日が昇る東海岸の風景の変化は緩やかだ。
時の変化によって変わりゆく風景は、人それぞれの心象風景として記憶のどこかに刻まれている。金武町米軍基地ゲイト前の派手な色で塗られた路地にあるネオンが灯る歓楽街は、昭和レトロの街並みとして戦後からほとんど変わらずに昔のままだ。
かつて、日常の暮らしと隣り合わせに沖縄のいたる所で見られたそんな街並みは、このごろは希少になっている。
のんびりとしてゆったり感のある東海岸に、忽然(こつぜん)として現れた金武町火力発電所の煙突(高さ約170メートル)だが、すっかり風景の一部として溶け込んでいて違和感すら感じられない。
人影が少なくなった金武湾の海岸線は、晩秋から冬にかけて突然降る気まぐれな時雨が、海辺をセピア色に染めていた。
年の終わりに近づくこの時期の雨の様子が、移ろいゆく時の変化をそれとなく伝えるかのようでもあった…。
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