ディズニーの魔法の成分

「あーおわったぁ!お疲れ様~!」が映える夏の夜。
今日の疲れ、今週の頑張りを労いにどこへ行きましょうか? 東京ディズニーランドの夜に行われる、華やかなパレードや花火でスカッとするのも最高のご褒美ではありますが、たまには贅沢に、心の自由を取り戻すレストランへ足を運んでみるのはいかがでしょう。

アドベンチャーランドにある『ブルーバイユー・レストラン』をご存知でしょうか。
名前も、場所もよく知らなくても、恐らく多くの方がそのレストランを目にしたことがあるはずです。『ブルーバイユー・レストラン』は、アトラクション『カリブの海賊』で、バトーと呼ばれるボートに乗り込み出発してすぐ右手側に見えてくるそれです。一瞬リアルな背景にも感じてしまう食事風景が、まさか本物のレストランだったと気づいたときには驚きと憧れの気持ちが一気に高まる方も多いのではと思います。

アドベンチャーランドの中でも、一際ロマンティックな通り、ニューオーリンズ・スクエアに、レストランの入口はあります。夏の日差しが照りつける昼間でも、一歩足を踏み入れたそこは別世界。ホタルが舞い、当時この地で流行していた〝東洋への憧れ〟を象徴する日本の提灯が優しく灯る、静かな夜の入り江が広がっています。

『カリブの海賊』というアトラクションは、19世紀前半の海賊の衰退から徐々に時代を遡り、17世紀前後に実際にあった海賊が大暴れしていた大航海時代を追体験できる場所です。つまりこの『ブルーバイユー・レストラン』は、19世紀のニューオーリンズを舞台とした、カリブ海の海賊たちが玄関口としていた港のある場所なのです。激しく、荒々しい海賊たちの世界。その旅立ちの場所が、なぜ昼ではなく、この静寂な「夜の入り江」なのでしょうか。

当時のニューオーリンズは、厳しい法律や社会のルールに縛られた世界でした。昼間は 「社会の役割」 に従って生きなければならない人々にとって、夜こそが、国の監視から隠れて「本当の自由」になれる唯一の時間だったのです。 ここは、舗装された陸(日常)でもなければ、命がけの戦いが待つ外海(冒険)でもない、その真ん中にある、誰にも邪魔されない聖域。

そして現代――電化製品が発達し、昼も夜もなく戦えるようになったからこそ、「おわったぁ~」と心にかけたブレーキを外す夜の時間は、何よりも大切なひとときです。日常のルールから離れて夜の静寂に身を委ねる私たちは、あのカリブ海の海賊たちと同じなのかもしれませんね。

カエルの声に耳を傾け、冷たいドリンクを味わいながら、暗闇の水路を進んでいくボートを見送る。この夏、少し頑張りすぎて心が乾きそうになったら、あの永遠の夜の入り江へ、心の自由を取り戻しに行ってみませんか。人生という冒険の海へ、笑顔で漕ぎ出せる魔法の成分に触れられるかもしれません。


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川崎 真衣