やんばるスケッチ

まだ残暑がつづく中、彼岸を境にして日は短くなり日暮れが早くなってくる。そこに、心地よい風が吹くと彼岸花によく似た「オオゴチョウ(沖縄三大名花)」が風になびき、すっかり秋らしさを感じる。

やんばるは、高い山が連なっていることから、東海岸の日暮れは山の尾根に沈む夕日によって日暮れがいっそう早くなっている。

上り下りや曲がりくねった道が多い「やんばる路」は、風景の変化を楽しめる一方で退屈なところはあるが、それはそれで楽しめる。

名護市東海岸で、やんばるを後に帰路に向かう時に通る道がある。そこは、南向きの峠の道(国道329号)で、まるで緩(ゆる)やかな勾配を下るジェットコースターに乗っている気分になってしまう。

峠の道から、はるか遠くに恩納岳の稜線に沈む夕空が見えて、秋の一日の終わりを告げるドラマテックな景色が広がっていた。

この時期、日が暮れて夜の帳(とばり)が降りる頃になると、集落のどこからともなく漏れ聞こえてくる「豊年祭り(地域伝統芸能を披露)」の稽古の音(ね)が、夜遅くまで続いている。

やっと収穫を終えたやんばるの村々にとって、秋風を感じながらホッとひと息つく、待ち遠しかった「和(なご)みの季節」なのだ…。


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高嶺 晃